冷たいアナタの愛し方

とりあえずウェルシュとの密談は近いうちに成功しそうだ。

あの色ぼけのことだから、こちらが少し甘い言葉でたらし込めば――うまくいくはずだ。


今はそれよりも――


「ちょっと!ちゃんと私の話を聞いてよ!」


「うるさい。つべこべ言わずついて来い!」


怒鳴り合いながら離宮に着くと、いつの間にか…ルーサーが離脱していた。

思いきりがっかりしたオリビアの肩を突いて離宮の中に連れ込んだジェラールは、久々にあれこれ身体を動かしたので痛みに顔をしかめつつ、ソファを指す。


「ハウス。言うことを聞け」


「犬扱いしないで。どうせ奴隷なんか死んでも心なんか痛まないし、替えが効くとか思ってるんでしょ。私をぼろ雑巾みたいにしていたぶって殺すつもり?」


「お前…俺のことを悪者扱いしすぎだ。話を聞け」


渋々ソファに座ったオリビアは終始ジェラールを睨みつけて笑顔など全く見せない。

ルーサーが居る時はころころ笑うのに…


まさか素直に“気に入っているから傍に居ろ”と言えるはずもないジェラールは、正面のソファに座って長い脚を組んで天井を見上げた。


「…俺はこんなだから傍に置く人間を吟味する癖がある」


「そうね、そんなだからそんな性格になったんでしょ」


「……お前は口は悪いが、信用に足る奴だと思ってる。待遇はちゃんと考えてやるから俺の下で働け」


「あなたの下で奴隷として働けってこと?私の住まいはどこに?お城の地下から通えばいいの?」


矢継ぎ早に質問を浴びせてくるオリビアが不満たらたらなのは目に見えてわかる。

ジェラールは、だからこその切り札を投入した。


「ここの1階を使え」


「…えっ!?あなたと一緒に住めって言うの?…いやよ!」


「ここに常駐していればウェルシュにも狙われないし、ルーサーだって毎日通いに来る。どうだ」


ルーサーという名にぴくんと反応したオリビアを見逃さなかった。

それはそれで癪に障ったが、信用に足る人間と思っているのは確かなこと。


「……ちょっと考えさせて」


「よく考えろ」


言いくるめるのに成功して、伏せをして上目遣いで見つめてくるシルバーの頭を撫でてから2階に上がった。