冷たいアナタの愛し方

「シルバー…いいわね?行くわよ?」


「くふっ」


あれから無言を貫き通したオリビアは、完全無視を受けて為す術もなく2階へ戻って行ったジェラールを確認した後、まだ返していない鍵を手にジェラールの離宮を出た。

…あんな男の奴隷なんてまっぴらだ。


優しくして、とまでは言わないが…ジェラールの傷はかなり回復したし、傍に居て看病する必要もない。

それ位なら、ウェルシュの傍に居て両親やローレンのことを聞き出した方が時間を有効に活用できるし、今後の対策も練ることができる。


「シルバー、背中に乗せて。お城の扉まで走ってね」


「わふっ」


いよいよオリビアに乗ってもらえるとあって大喜びしたシルバーは、すぐさま首を提げてオリビアを背中に乗せると、勢いよく駆け出した。

2階に居たジェラールは1階から聞こえた物音に窓辺に寄って外を覗き込み、そして――オリビアが逃走を図っているのを見つけて音を立てて窓を開ける。


「おい奴隷!勝手なことをするな!」


「……」


またもやの完全無視。

振り向くつもりもないオリビアの態度に怒りはすれど、そこまで怒らせてしまったのは自分だとわかっているジェラールは、悪態を突きながらシャツを脱ぎ捨てて正装となる白いシャツと黒いパンツに着替えてネクタイを掴むと階段を駆け下りる。


「ウェルシュに近付くつもりか!?あいつは手段を選ばない男なのに…くそっ!」


鍵を奪われたままなので、痛む傷口を押さえながら離宮を出てルーサーの離宮を訪ねたジェラールを迎え入れたルーサーは、驚きに目を見張りながら首を傾げる。


「どうしたの、シャツのボタン掛け違えてるよ」


「あの奴隷が俺の鍵を奪って逃走した。ルーサー、お前のを寄越せ!」


「ああもう…怒らせたの?ほんっと君たちは…」


呆れ顔のルーサーはジェラールの肩を押して外に出すと、扉に鍵を閉めてにこやかに笑う。


「僕にしか説得できないと思うから一緒に行くよ」


その一言は何故かジェラールをいらっとさせた。