冷たいアナタの愛し方

早朝から森の奥をぶらぶらしていると、どこかで鼻をきゅんきゅん鳴らしている音が聞こえた。


午前中は座学があると言っていたオリビアが恋しくて鳴いているであろうシルバーを捜して歩き回ったジェラールは、口笛を吹いてここだと声をかける。


「ワンワンワンワン!」


「うわ、飛びかかるなよな。今日は俺が飯を持って来てやったぞ。さあ食え」


肉屋で買った肉の塊を投げてやると、シルバーが喜んで貪りはじめる。

木々が生い茂っていい感じに日差しを防いでくれているのでごろんと寝転がったジェラールは、会ったばかりのオリビアのことばかりを考えていた。


「あんな女がいい女になるはずない。嫁の貰い手が現れるはずもない。料理ができなくて剣を握っている方が好きだと?…あれは無理だな。うん、嫁に行き遅れる」


仕方ないから自分が国王になってオリビアに嫁の貰い手がなかったら傍に置いてもいい、と思ってしまったジェラールは、やや頬が熱くなりながら綺麗に骨まで平らげたシルバーを呼び寄せて腹の上に乗せた。


「毛色が銀色だからシルバー?安直な名前だな、がりがりが考えそうなことだ」


「そのがりがりって私のこと?」


昼を過ぎないと来ないと思っていたオリビアの声が頭上から降って来て慌てて起き上がったジェラールは、腰に手をあてて仁王立ちしているオリビアと会えて内心嬉しいと思いつつも冷たい口調で早速攻撃。


「胸もないし背も小さいしがりがりだろ。違うなら反論してみろ」


「大きくなったら胸も大きくなるし背もぐんぐん伸びるんだから。…それより優しい人さんは?まだ来てないの?どこに居るの?」


むっとしたジェラールはオリビアが持っていたバスケットを奪うと勝手に中を開けてリンゴに齧りつく。


「後で来る。…お前…あいつが好きなのか?」


「えっ!?そそそ、そんなことないけどどうして!?」


声が裏返ってしまったオリビアは、ジェラールの手からリンゴを奪い返して動揺しながら齧りつく。

…オリビアは気にしていなかったが、さっきまでジェラールが齧っていた部分に齧りついて間接キスになっていたことにすぐさま気付いていたジェラールは、動揺しながらぷいっと顔を背けた。


「俺たちはここに静養に来ただけだしもうここには来ない。…好きになっても傷つくのはお前だけだぞ」


「…別に…好きじゃないもん…」


か細い声でそう返したオリビアは、シルバーを抱っこしてふかふかのお腹で顔を隠した。