冷たいアナタの愛し方

不本意ながらジェラール付きの奴隷となっているオリビアは、ジェラールの離宮の1階で寝泊まりをせざるを得ない。

1階にもベッドがあり、オリビアはそのベッドで眠っているのだが、ルーサーは狭いソファに横になって寝ていた。


だがジェラールの容態が落ち着いてきたある日――


「そろそろ僕は自分の離宮に戻ろうかな」


突然そう言い、キッチンで洗い物をしていたオリビアを驚かせてマグカップを床に落として割ってしまった。


「え…っ、でもあなたが居ないと…」


「一応ジェラールは手負いの獣みたいなものだし、襲いかかっては来ないよきっと。多分」


「多分って…多分じゃ困るわよ。だって私ひとりじゃ食事の準備もできないし、ものすごい我が儘言われたら対処できないし…」


「料理は最近ずっと研究してたみたいだし、いざとなれば城の方で作ってもらえば問題ないでしょ?ものすごい我が儘は…まあそこはジェラールと戦ってもらわないとね」


にこやかな笑顔でそう言われると返す言葉がなくなり、うろうろ辺りを歩き回るシルバーを呼び寄せたオリビアは、しゅんとうなだれてソファに座った。


「僕が居ないと不安?」


「それはもちろん。だってルーサーが居なかった私…こんなに頑張れなかったし…」


小さな声でぶつぶつ言っているオリビアの言葉が耳に届いたルーサーは、顔が綻ぶのを抑えることができずにオリビアの隣に座って頬をちょんと指で突いた。


「そんな可愛いこと言ってると狼に襲われるよ」


「え、狼?狼ってジェラールのこと?」


「違うよ、僕のこと」


オリビアが目を見張ると、恥ずかしくなったルーサーは頭を掻きながら立ち上がってテーブルに広げていた本や書類をまとめてドアを指した。


「じゃあそういうことだから。ジェラールは意外と紳士だから喧嘩を売らなければ仕掛けてはこないと思うよ。お休み」


「え、え、え、ちょ、ちょっとま……」


終始笑顔のルーサーが本当に居なくなってしまうと、ぽかんとしたオリビアは天井から聞こえた物音に思わずびくっとなってしまった。


「ど、どうしようシルバー…」


「くふっ」


――僕が居るよ。

そう伝えたつもりだが、シルバーのアピールに気づかないオリビアは、フリーズしたまま。