冷たいアナタの愛し方

城内を闊歩できるのは高級官僚や衛兵、そして奴隷のみだ。

上階には仮ではあるが離宮とは別に王族が住まいにしている部屋もあるので、身分証提示などのセキュリティーチェックもかなり厳しい。

そんな中――ジェラールは通りすがる彼らから一心に注目を浴びていた。


「ジェラール王子が奴隷を…?あれほど嫌がっていたというのに」


「しかし綺麗な娘だな、本当に奴隷なのか?どこかの令嬢なのでは…。それにあの格好…メイド服…?」


「なんだあの犬みたいな狼みたいな…だが大きすぎる。魔物か?」


散々注目を浴びてしまい、フードで顔を隠すことができなくなっていたオリビアは皆からじろじろ見られて、シルバーの脇に立ってなんとかむき出しの脚を隠そうとしていた。


「やっぱりこの格好いやだわ。私あの奴隷の服でいいから…」


「俺付きの奴隷だというのにあんなみすぼらしい格好をされると俺の沽券に係わる」


「あなたの沽券なんか関係ないわよ。ああもうやだ、みんなじろじろ見過ぎ!」


シルバーの大きな身体でタイツ姿を隠しつつ、城内を捜し回っていたウェルシュに見つかってしまうと、ジェラールがようやく動いた。

オリビアを背中に庇うようにして立ち、荒い息で顔を真っ赤にしながら近付いてくる酒樽がオリビアまっしぐらに近付いて来る。


「ジェラール!そこの奴隷を俺に渡せ!」


「……兄上」


渡さないという強い意志と語気を強めて顔を上げたジェラールに威圧されて思わず後ずさったウェルシュは、つんと顔を逸らしているオリビアとなんとか目を合わせようと背伸びをしている。

情けない長兄は、自分の命をむしり取ろうとした。

もちろんその事実を忘れていないジェラールは、突然オリビアの長い髪を引っ張って前に引き出すと、馴れ馴れしく腕に抱き込んだ。


「ちょ…っ、何するのよ!」


「もう俺のお手付き済みですが。俺のお古でよければ差し上げますよ」


「な…っ!お前…俺がその奴隷を気に入っていることを知っていて…」


「失礼」


呆然としているオリビアの肩を抱いて離宮に通じる扉の鍵を開けたジェラールは、オリビアを通すと扉を閉めてせせら笑う。


「見たかあの顔」


「…この馬鹿!」


いきなりジェラールの左頬にビンタを食らわせたオリビアは、シルバーと共に駆け足でジェラールの離宮へと戻って行く。

面喰ったジェラールは頬がじんじんするのも忘れて立ち尽くしていた。