「もっちろんお金は重要だけど、それだけじゃないよ。私は好きだからやってんの、好きなことを仕事にできてるの。だからサイコーに幸せ」

おねえさんはにっこり笑って、ブンちゃんの目線に合わせて腰を屈めた。


「ブンちゃんはゆっくり考えたらいいよ。みんなブンちゃんのこと大好きだから」

そう言っておねえさんは、茎を短く切った赤いガーベラをブンちゃんの髪にすっと挿した。


「んん、かわいい」

満足そうに頷いて、おねえさんは嬉しそうに笑った。他のお客さんがお店にやってきて、おねえさんは「じゃあまたね、ブンちゃん」と言ってお店の中に消えていった。


頭のガーベラをそっと触って確かめてから、ブンちゃんはまたまた歩き出した。


「おねえさんにお礼を言うのを忘れてしまいました」

次に会ったときにきっと言おう。そう思い定めてから、ブンちゃんは空を見上げた。


青い空に、雲がぽかりぽかりと浮いている。ブンちゃんのワンピースとおそろいだ。


「好きなこと、好きでないこと、幸せになる」

ブンちゃんは呟いた。

やっぱりまだ分からないけれど、みんなが笑っていられたらいいなってブンちゃんは思った。


「アメさん、今日はご馳走ですよ」

この町のどこかでお友達とおしゃべりしているであろうアメさんに声をかけた。

カゴの中のお魚と果物が揺れている。頭に付いた赤いガーベラは凛と前を向いていた。


帰る時間まではまだまだある。これから何が起こるかな。


ブンちゃんのお散歩は続く。






















ブンちゃんとぱらぱら小道

おわり