「これからどうしようかと思っていた矢先…正忠は、俺を救ってくれたんだ。当時、正忠の会社は右肩上がり。俺は、正忠に心から感謝した…」


裕一郎さんは、懐かしむように言った。




「でも…突然・・正忠が事故に遭って死んだ。正忠の妻である美咲と、実乃里ちゃんを残してね…」


・・・。

お父さん……



「俺は正忠の代わりに、あいつが残してくれた会社を受け継ぐことを決心した。そして…実乃里ちゃんの母親・・美咲とも、助け合って生きていくことを決めたんだ。でも…正忠が亡くなってすぐに・・俺の妻、南朋の母親も亡くなったんだ」




そんな…

立て続けに、亡くなるなんて…




「さすがに参ったよ。それは美咲も同じだが…唯一の親友と、妻を亡くした俺は…ひどく落ちていたよ。正直、自殺も考えたりした……」


裕一郎さん…



「でもね…そんな俺のそばにいてくれたのは・・美咲……実乃里ちゃんのお母さんなんだよ…」




お母さん…?



「君のお母さんは、自分も亭主を先日亡くしたばかりなのに…俺に本当によくしてくれた。あの頃、美咲がいなかったら、俺はどうなっていたかわからない」