目覚まし時計はもう朝9時だった。
昨夜は『タイタニック』のDVDを観ながら350mlの発泡酒を2本も飲んでしまった。
「ああ…もう、朝かあ…」
気怠かった。
なんの予定もない日曜日。
尚哉は今頃、どこかのベッドの中で彼女と裸で寄り添っているのだろう。
当たり前だ。
久しぶりに逢う恋人同士が、
睦み合わないわけがない。
「はあ………」
溜息が出る。
奈緒子はベッドから降り、トイレに向かった。
雑然とした室内。
父も母もすでに店へ出勤し、3LDKの団地の我が家には誰もいなかった。
ダイニングテーブルには、朝刊と朝食のソース焼きそばの皿がラップに包まれ、置かれていた。
夢に出てきたソースの匂いの正体はこれだ。
「もお…」
奈緒子は苦笑する。
奈緒子が幼い頃から時々、母は朝ご飯には相応しくないようなものを用意する。
牛丼やトンカツとか。
とっくに慣れっこだけれど、まだ食欲が湧かない。
居間のソファに腰掛け、ぼんやりする。
リモコンをかざし、テレビを点けた。
なんの得にもならないワイドショー。
数人のタレントが騒いでいるだけの。
こういうのは、人の声を聴くだけの番組だ。それだけで、少し安心する。
久しぶりに、恵也の家にいる時の
ことを夢に見た。