「だったら俺がこんな風にしても、無駄 だよな?」 そう言いながら、ドアの方に向かってい く棗。 棗が遠くて、なんだか切なくて、突き放 されたみたいで、胸が苦しい。 「棗っ―――……」 「何」 思わず呼び止めたら、こっちを振り向い た棗の声は冷たくて。 それ以上なにも言えなくて、静かに首を 振ると、棗は何も言わず出ていった。 ―――ポトリ。 一滴、頬を伝った涙の意味も、今はわか らないまま―――……。 「はぁ?喧嘩したぁ?」 翌日。 元気のなかった私を、中庭に連れ出した 美怜。