少しだけ微笑んだ東野君に、私も微笑む 。 「バイバイ……東野君」 「ああ……バイバイ、柏木」 もう涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、 下手くそに笑って、私がそう言うと。 東野君はたった一滴〔ひとしずく〕の涙 を流して―――微笑んだ。 「愛してたよ……春」 「ありがとう、千尋!」 そこからはもう振り返らなかった。 ただひたすら、家まで走って―――。 「棗!」 棗の部屋に押し入って、棗にぎゅうっと 抱きついた。 好き…好き、好き!