一瞬だけの幸せ。 もうこれで全てを終わりにするから。 彼への思い名残をこれですべて消し去る から。 ―――なのに。 「……お、前……。今、俺に―――」 「……っ!」 なんでこうもタイミングが悪いんだろう 。 目の前で驚いたように目を見開いた棗は 、戸惑ったように私を見つめて。 「……ごめんっ」 「―――待てよ!」 その場から逃げ出そうとした私を、後ろ から抱き締めた。 ―――ドクンッ