胸のドキドキが走ったからだって誤魔化
すように。



あり得ない。

あんなヤツにドキドキするなんて。



「あり得ない……」



「―――あれ、柏木?」



ぐったりと屋台のカウンターに伏せてい
ると、上から降ってきた声。



ハッとして顔を上げると、そこには見る
からに好青年って感じの男の子が居た。



黒い清潔な髪の毛と、優しげな目元。



もしかして―――。



「え、あ、東野〔とうの〕君!?」



「せーかい!」



そう言うと、彼はニッコリと笑ってピー
スした。



―――東野千尋〔ちひろ〕君。


中学の時の同級生で、あの頃はバスケ部
のエースで、皆の人気者だった。