瑠璃垣財閥のトップが、
Ansyalのボーカルしてるだって?
「けど……そんなこと、
一言も騒がれてませんよね」
「まぁな。
その辺は十夜を口説けたら自分で聞き出せ。
瑠璃垣の力も強いぞ。
最高の味方だろ」
託実さんはその日から、
ずっと俺の傍で支えてくれて、
数日後、
唯ちゃんの理事会呼び出し日を迎えた。
朝、託実さんを訪ねて
カチっとしたスーツ姿で、
Ansyalの時とはガラリと雰囲気が違う
十夜さんが姿を見せた。
……ホントだ……。
口調も雰囲気も違うから、
ずっと気がつかなかったけど、
確かに……そこにいるのは、
紛れもない十夜さん。
支度を整えた託実さんが、
十夜さんの傍へと近づいていく。
その後ろには憲さん。
「後で、ここに祈を呼び寄せる。
帰ってきたら、
今度は雪貴、お前の仕事。
社長の許可は取った。
AnsyalのTV出演だ」
託実さんはそう言って、
部屋を出ていった。
「まっ、見てろや」
雰囲気が違うのに、
仕草と口調が一瞬だけ、
俺がよく知る十夜さんに戻る。



