「毎日、
 無理してこなくても大丈夫よー。
 
 先生も、
 大分落ち着いたから」

にっこり笑顔を見せながら
言い返す私。



「って言うか、
 待ってても唯ちゃん
 レッスン室に来ないじゃん。
 
 だったら俺が行くよ」


宮向井くんは、
ベッドサイドのテーブルに
自分の鞄からノーパソを
取り出すと
いつものように電源を入れる。




ノーパソが素早く起動すると、
そこから自分が演奏している
コンクール用の
ピアノの練習風景の
動画を順番に再生していく。




「唯ちゃん。
 前、指摘された18奏。

 ちょっと弾き方変えてみたんだ」




ノーパソのスピーカーから
流れてくる音は決していい音とは
いえないけれど映像に映る、
彼の微妙な鍵盤タッチの違いが
その進化を確実に物語ってた。