Bは手帳を受けとると、何も言わずに、じっとそれを眺めた。



「これ、もらっていい?」

「破って持ってっていいよ」



そうは言われても、ためらっているBに、そのページを破りとって渡す。



「ありがと」

「もうここにも、来なくていいからね」



Bがこちらを見た。



「もう私の相手はいいよ、今までありがとね」



枕を抱えながらそう言うと、Bは優しく微笑んで。

もういいって言ってるのに、片腕で私を抱き寄せて、また勘違いしそうなキスをくれた。


絢子、あんたの言ったとおりだわ。

別にBは、関係を解消するとか、そんなことは言わない。

でもあまりにBが優しいせいで、申し訳なさにこっちから身を引いてしまう。

みんな、そのくり返し。



この大学にいる、男。

ストレートに進級していれば、今4年。

胸に傷がある、たぶん小さいのが数箇所。



それだけ。

その情報だけをたよりに、Bは誰かを探している。


見つかるといいね。

私たちが言えるのは、これだけ。


こんなに優しくて、なんでも聞いてくれて。

こっちが照れくさくなるくらい大事にしてくれるのに、踏みこませない男。


残酷なB。




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