私は開店からのシフトを終えたところで、お昼は休憩時間にとった。

先輩が3把、封を解いてお鍋に入れる。

ぱっと放射状に広がる麺に、手慣れてるなと感心した。



「昼っていうか、おやつっていうか。早朝からバイトだったから、実は三食目」

「夕方もまたバイトですか」

「今日は夜から朝までだね」



身体壊しちゃいます、と言っても、だから食べるんだよ、と相手にしてもらえない。

バッグを置いて洗面所で手を洗い、私も手伝う。

麺をざるにとって、流水で冷やす。

芯まで冷えて、きゅっと締まったところに、先輩が少しの氷水を張った綺麗なガラスのお皿を置いてくれた。

盛りつけている間に、先輩が冷蔵庫からとり出したのは、褐色の液体が入ったガラスのボトル。



「おつゆ、ご自分でつくるんですね」

「買うほうがめんどくさくない? 使いきれないし」



先輩の「面倒」の基準が、わかってきた気がする。

確かに、基本的な乾物と調味料さえあればできてしまうから、つくりかたさえ知っていれば、わざわざ買うより楽といえば楽。

余らせたあげく、ビンを捨てたりすることのほうが、先輩には「面倒」なんだろうなあと思うと、微笑ましい。



普段は部屋の隅に立てかけてある丸テーブルに、先輩がふたりぶんの食器をセットしていた。

やっぱり私、一緒に食べることになってる。


もう、今日は運動もしてないのにこれじゃ、食べすぎだ。

食べるけど、とひとりで居直っていると、確信犯だったんだろう、先輩が満足げに微笑んだ。


向かいあわせと隣りあわせの間くらいの角度で、小さなテーブルを挟んで座る。

まだ来たばっかりなのに、なんだかもう一日ここにいたような気になっている自分に気がついた。



「今朝、窓開けて寝てたらね、スズメが飛びこんできて」

「えっ、可愛いです」

「響きは可愛いけど、向こうは動転して、すっかり凶暴になっちゃって、大変だったんだよ」

「障子に穴があいてるの、それですか」