しんと沈黙の落ちた部屋に、先輩がぱたんと寝転がる衣擦れの音が響いた。



「眠くない?」

「いえ、あんまり…」

「じゃあ、洗濯終わったら起こしてくれない?」



腕の陰で小さくあくびをしながら、私を手招きする。

傍らにひざをつくと、ぐいと腰を引き寄せられて、崩れるように隣に寝そべる形になった。



「明日、早いですか? バイトですか?」

「うん、でもこのまま雨なら、中止…」



先輩はとろんとした声でつぶやいて、私を懐に入れるみたいに、身体をこちらに向ける。

腕で頭を殴られそうになったので、邪魔かなと頭を浮かせたら、腕枕をしてくれただけで。

そんな私をおかしそうに笑いながら、髪を撫でてくれた。


次第にその動作がゆっくりになり、先輩は眠ってしまったみたいだった。

そういえば、そもそももう寝る支度をしていたところに飛びこんだんだ。


洗濯機のアラームにも起きる気配がなかったので、私はそっと抜け出してシーツと服を浴室に干し、乾燥のスイッチを入れた。

一見すると昔懐かしい和風の下宿部屋なのに、こういう設備は最新鋭なのが善さんらしく、面白い。


寝床に戻って、枕元のリモコンで電気を消し、控えめに布団の隅にもぐりこむと、緩慢ながらも強引に抱き寄せられる。

一瞬、起きてるのかと思ったけれど、力加減のできてなさや寝息で、完全に寝入っているのを感じた。


先輩の胸に抱かれて祈った。

ありがとうございます、先輩。

どうか先輩が、このことで後悔し続けませんように。

だって私が願ったことなんです。

先輩にはなんの責任もないんです。


おやすみなさい、先輩。

よい眠りを。







電話の声で目が覚めた。

絶対眠れないと思ったのに、結局寝てしまったらしい。

私、思ってるほど繊細じゃないのかな。


部屋の中はうっすら明るく、けど窓の外は、まだ雨の音がしていた。