キスは唇がしびれるほど続いた。

途中で、もしやこのまま終わらされてしまうのかと、不安になるくらい。

また今度、なんてことにされたら、次いつこんな勇気を出せるか、わからないのに。


ふと離れた先輩の唇が、あやすように頬、こめかみ、額と移動しながら押しつけられる。

それが鼻先に落とされた時、目が合った。

本当にいいの? とその瞳が問いかけていた。

しつこいです、先輩。

そうふてくされる私は、それこそすねた子供みたいな顔をしていたに違いない。


先輩は困った顔で微笑むと、一瞬、吸いこまれるような真剣な表情を見せて。

そこからはもう、驚くばかりの体験の連続で、正直記憶が混乱してる。



耳を噛まれた。

痛いというほどじゃないけど、びっくりして身体が硬直した隙に、借りたTシャツの中に手が入ってきた。

首筋にキスをされた。

脱がされる時、明るさを気にして思わず抵抗した私を、先輩が優しく笑った。


暗くした部屋で、裸で抱きあった。

先輩の身体は、熱くて、重くて。

彼の汗が、私の肌を濡らした。





――ねえ、B先輩。

あの夜、私に根負けしたことを。


あなたは今でも、後悔してますか?










「――…う」

「痛い…?」



想像を超えた、というより、想像しようがなかった痛みに身体が言うことをきかない。

平気なふりなんてとても無理で、どこにぶつけたらいいかわからない力みを、ぎゅっと握った手から逃がそうとする。

先輩がふと力を抜いて、私の頭をなでた。

まさかやめてしまうのかと見あげると、暗闇に慣れた目に、私を気づかう瞳が映る。



「痛いね、ごめんね」

「先輩…」

「もうちょっと、頑張ろうね」



また襲う、裂けるような圧迫感に思わずずりあがる身体を、そうさせまいと抱きしめてくれる。

背中に回した手でしっかり私を抱いて、もう片方の手は、励ますみたいに頭をなでながら。