「……はあ。え、なんでですか?」
とりあえず真っ先に思ったことを尋ねると、水無月さんはちょっと怒ったみたいな表情をした。
「小野くんだから!」
「……はあ。そうですか…」
「そうなのです!」
終わ…った?
「いやいや理由になってないですしね!?」
「だいじょぶ!小野くんのお酒代は先輩社会人のこの水無月様が出してあげマス!」
いや俺が言ってるのはそういうことじゃないですし自分に様つけて呼ぶの初めて聞きましたよ水無月サマ。日本語わかりますか?
「っていうかね?違うの。同僚と会社帰りに飲みに行くのは出来るのね?」
「……まあ、そうですね」
「でもほら、小野くんと同じスーツ姿で会社帰りーみたいな雰囲気で飲みに行くって、なかなかできないでしょ?」
「……まあ、俺まだ学生ですしね…?」
「ね!だから今日はレアだよ!私も小野くんもスーツ!私は定時上がり!小野くんは…えっと……。わかんないけど、今日は特別な日だよー!」
水無月さんは定時上がりで、俺は就活帰りです。
って、言おうと思ったけど、やめた。
水無月さんの、この笑顔には、勝てないことは知ってるし。


