気が付けば、あたしのマンションの前に着いていた。


「茜がこれからどうするか俺には全く関係ないけど、これだけ言ってもいい?」

「じゃあ言うな」

「ハハッ。
本当に根性曲がりまくってるな」


あたしの返答を無視して続けて言う。


「何であの場所にいた?」

「それは…」

「バイトの
帰り道にしたら遠回りだろ?」


急に核心をついてきた。

あたしでさえも分からない質問をアイツは急に投げかけてくるのだ。


やっぱり侮れない奴だった。


「…ただの、暇つぶし」

「あっそ。ならいいや」


蒼次は笑ったまま、大きく手を振る。

やっぱり心の奥の奥の奥を見透かされているみたいだ。


きっと、そのことも明音から聞いたのだろう。


そして蒼次に投げかけられたことを考える。


気が付けば、そこにいた。

気が付けば、考えていた。

どうしてかなんて、あたしが一番知りたいぐらいだ。


貴之がウザいほどしつこいから頭に残っていた。

もしくは嫌い過ぎて、思い出してしまった。


きっとそうに違いない。

でも正論を見つけられなかった。


こんなくだらないことを聞く蒼次にイラついた。

だから、


「蒼次」

「ん?」

「あたしも
これだけ言っていい?」

「どーぞ」


なんでも来いと笑顔のまま大きく腕を広げる。


「明音ちゃんを
落とすのは大変だね」


あたしはそれだけ言って、マンションの階段を駆け上がる。

さよならも言わずに。


「痛いところつくなぁ」


どこまでも曲がりまくった奴だ。

真っ赤な夕日は顔を隠した。