「茜ちゃん、今日って暇?」

「忙しい」

「あのね、一緒にサッカーの
応援に行こうよ!」


あたしの返答なんて無視して勝手に話は進められていく。


「だから今日は忙しい」

「そんなこと言いながら
超暇でしょ?」


今すぐに行こうと急かしてくる。

行く気なんて全く起こらなかった。


本当は貴之のことが好きな明音の本音が分からないからっていうのもある。

けれど、それだけじゃない。


貴之に会いたくないっていうのもあるけれど違う。

人というものに関わりたくない。

これ以上、あたしの領域に踏み込んで欲しくない。


「あたし、
これからバイトだから」

「そんなの誰かに代わってもらいなよ。それとも私が代わろうか?」

「もう行く時間だから」


あたしは鞄を肩に下げて玄関に向かう。


「どうして私を避けるの?」


突然過ぎて硬直してしまった。


「花火の前ぐらいかな。
ずっと避けてるでしょ?」


その通りだった。

おっとりしてるようで意外に鋭い。


「私のことが嫌いとか、関わりたくないとか、そんな理由じゃないでしょ?」

「急に何…」

「いいから答えて!」

「…そうだよ」


あたしのことを利用しているかもしれないという会話。

それを聞いて以来、もっと信じられなくなったんだ。