「ほっといてってば」

「ほっとけないだろ」


茜はやはりクールにかわしてくる。


「俺たちは生きているから
相手と目を見て話せる」


俺の目頭が熱くなっていた。


「相手のことを思いやれる。だから相手のために尽くそうとするんじゃないかな」

「…だから?」

「茜も生きているんだよ」


そう、この場所で。


「その命は少なからず
その両親からもらったんだよ」

「だから、そんな親でも
感謝しろって言うの?」

「ありがたいことだって
できるなら分かって欲しいよ」

「…そんなの無理」

「でも俺が言いたいのは
そういうことじゃない!」


そうだ、そんなことじゃない。


「もっと、
いろんな表情をみせてよ」


それは俺じゃなくて構わなかった。

俺のことが嫌いだって知っているから。

だから誰でも構わない。


「生きてるって、実感しようよ」


毎日が充実することが望ましい。

無理でもちょっとしたことに感情を動かして欲しい。


「じゃないと、
茜がもったいない」


気が付いた時には俺の目からポロポロと涙が溢れていた。


君に少しでも幸せを感じてもらいたい。

その一心で。