はじめは母親のためにいなくなりたいと思っていた。
でも今は違う。
自分のために離れたいと思った。
あんな人と離れたいと心底思ったのよ。
自分の自由を手に入れるため。
もう振り回されないために。
茜は最後まで辛い顔ひとつ見せずに話しきった。
悲しさなんて知らないのか、もう諦めたのか分からなかった。
「それは辛かったなぁ」
「全く思わない」
「本心からそう思ってる?」
「いい気味だと思ってる」
今では笑い話だと言うように話す。
それが彼女が変わってしまった原因かもしれないと俺は思った。
1人でいたい、関わりたくないって思ったのも全て。
茜はきっと違うと言うに決まっている。
しかし原因の1つじゃないだろうか。
彼女は涙1つ見せない。
でも笑いもしない。
優しく思いやりの心を持つ茜はどこにいったんだろう?
いや、いつまで眠り続けるのだろう。
「なぁ、その親のこと恨んでる?」
「別に、何も思わない」
「どうして?茜は人のことを
考えられるって俺は知ってる」
「急に熱くならないでよ」
彼女はまた面倒くさそうに払いのけようとした。
「目を見て話そうよ」
俺は無理やり彼女と目を合わせる。
「指図しないでよ」
「茜!」

