「パパとママお別れするの」
「じゃあ、明日には会える?」
当時あたしにとってのお別れは友だちの「バイバイ」と変わらない。
「ずっと会えないのよ。あかねはこれからどっちと一緒にいたい?」
6才になったばかりのあたしにとって過酷な選択だった。
「そうよね、困るよね」
ママがそう言うとパパはすぐに出掛ける仕度をした。
そしてあたしの目の前から消えてしまった。
どちらも選ばなかった場合はママと一緒にいること。
それはあとから知った話だった。
そのあとは知ってのとおり、誰にも言わずに転校した。
住んでいた家は引き払われた。
思い出と一緒に失くしたんだ。
「なんだよ、それ。
勝手過ぎるだろ?」
「こんなのまだまだ序の口だった。まだ聞きたい?」
妖しく微笑む彼女に対して、俺は頷いた。
引っ越したと言ってもただの隣町。
ちなみに夏には花火が有名な町だった。
引っ越して友達も出来て、時は過ぎていった。
順調に過ぎ、小学3年生になった。
でもママは急に変わってしまった。
なぜならママが働いていた会社が倒産したから。
優しかったママはやつれていった。
「ママ?大丈夫?」
「…えぇ」
ママは次にキャバクラってとこで働き始めた。
夜遅くに帰ってきてはお酒を飲む。
そしてタバコを何本も吸っていた。

