「はぁ。
完璧、蒼次にはめられた」
茜はボソッと呟いた。
こんなつもりじゃなかったのにと言うように。
「で、何を聞きたいのよ?」
直球に話を振られて動揺してしまった。
聞きたいことは確かにたくさんあるけれど。
「早くしてよ」
「あのさ、ご両親は元気?」
その問いかけに溜息をもらす彼女。
「はっきりと言えばいいじゃない」
「え?」
「家に両親がいないし、しかも苗字変わってるし。何かあった?って聞きたいんでしょ」
俺の言いたいことがバレていた。
何度も頷く俺の横でもう一度溜息をついていた。
「簡単なことだよ」
彼女はまだ花火の煙が残る夜空を見上げて言う。
「離婚した」
明るく言う彼女の口調に俺の方が動揺していた。
あんなにも仲が良かったのに。
ホームドラマに出てきそうな家族だったのに。
「何びっくりしてんの。それじゃ今から話すことに失神して死ぬよ」
「うっ」
急に積極的に話し始める彼女。
花火を一緒に見たからか。
俺は茜が心を開き始めてくれたと勘違いを起こした。

