「離してってば!!」
「いいからいいから!」
屋上の扉を勢いよく開けた。
ドドーーーーン!!
屋上の目の前には大きな花火。
つぎつぎと夜空に打ち上げられていく。
「きれ~い」
「やべぇよ!」
明音ちゃんも陽平も興奮していた。
色とりどりの花火が打ち上げられる。
俺の胸も高鳴っていく。
「いい加減、腕離して!」
「離さない。どうせ逃げるんだろ」
「そうよ」
「本当は見たかったんだろ、花火」
なぜ来なかったのか理由はさっぱり分からないけれど、見たかったに違いない。
「昔、言ってたよな。ここから大きな花火が見れたらいいのにって」
さっき思い出した幼いときの記憶だった。
毎年伝統のように隣町の川岸で打ち上げられる花火。
まだ身長も低くて幼い俺たちは花火が遠くて届かない。
見ることが出来ない打ち上げ花火を寂しく2人で寂しく音だけを聞いていた。
その時、茜は言ったんだ。
『マンションの屋上なら
見れるかな、届くかな』
でも当時、屋上に来ても見れなかった花火に2人で肩を落とした。
『たかゆきくん、
いつかここで一緒に見たいね』
小さな頃の簡単な口約束だった。
あの時の花火とは違う形だけど実現した。

