その言葉に横で呆れる蒼次。

悲しそうな表情を浮かべる明音ちゃん。


みんな言いたいことがたくさんあるが、言えずにその場で硬直していた。

かなり怒っている陽平だけが口を挿もうとするが、今はとりあえず止めた。



茜。

どうして一言謝れば済むのに何も言わない。

自分は何も悪くないって顔をして振舞っているんだ?


俺は何のために誰のために、全力疾走したのだろう。

それさえも分からなくなりそうだ。


ドーーーーンと響く音さえも遠ざかっていく。


俺は思考回路を変えようと茜越しに見える殺風景で薄暗い部屋を見渡す。

他の人の気配が全くしない部屋を涼しい風が通り抜けていく。


思ったとおり、窓は全開だった。


ドーーーーン!

ドドーーーン!!


大きな花火の音が響く。

響いては消えていくばかり。


花火の音で我に戻った俺は目の前にいた茜の腕をつかんで、急に走り出した。


「どこに行くんだよ!?」


蒼次が声をかけた。

同じようにみんなが不思議そうに俺を見た。


「屋上!」


何かを思いついたようなキラキラした顔つきで階段を昇っていく。

蒼次たちは何が起きているのか分からないだろう。


それでも蒼次たちは俺について来てくれる。


カンカンカンとアルミ製の階段を昇っていく。


何度も、離してという茜の言葉を無視して、無我夢中に屋上に向けて駆け出して行った。