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貴之の背中を追うように蒼次たちも走り出す。
取り残されないように。
人ごみをかき分けて、ひたすら進もうとした。
でも、ただ1人。
明音ちゃんはどんどんと離されていく。
何も見えずに無我夢中に走り続ける貴之。
それに必死についていく陽平。
俺は1人遅れている明音ちゃんに近づいた。
「蒼次くん、先に行って!」
そんなこと言って本当は一緒に茜ちゃんのところに行きたいって思っているくせに。
「あとで、
ゆっくりと向かうから」
またそんなこと言い出して。
彼女は場所も知らないくせに。
そもそも方向音痴なのに。
「大丈夫だから、
俺がいるから一緒に行こうか」
俺は手を差し伸べた。
「茜はきっと全員一緒の方が
喜ぶと思うからさ」
俺は微笑む。
明音ちゃんは涙ぐみながら頷いた。
その手を握ったまま、走り出した。
陽平。
こんなこと知ったらきっと怒るだろうな。
説教はあとでじっくり聞くから今は許せよな。

