「あの、茜ちゃん
迷子になってるんじゃあ…」
「それはないよ。運動音痴だけど、方向音痴じゃないからな」
横でその通りと頷く蒼次。
「それに昔はこの神社にも
よく遊びに来たんだよな」
懐かしそうに呟いた蒼次に俺も同意した。
よくここで鬼ごっこやダルマさんが転んだとかした。
一番嫌いだった遊びはママゴト。
そして一番好きだったのもママゴトだった。
嫌いな理由は、
『たかゆきくんはおとなりの
おじいちゃんになってね』
すっごいかわいく笑って言うから仕方なくしたこともある。
あとペットの犬とか、野良猫とか。
でも好きだった理由も単純だった。
『たかゆきくんは
あたしのだんなさまね』
小さい頃の仮の遊びでも、旦那様になれたことが嬉しかった。
嘘でも『おかえり』って言ってくれた。
小さいときのママゴトは全て両親の真似事だから。
「じゃあ、どうすんだよ。
8時から花火始まるんだろ?」
待ちきれないのか陽平がイライラし始めた。
せっかくの待ち合わせなのに来ない。
もちろん、メアドも知らない。
「明音ちゃん、
2人で先に行こうか」
「でも…」
もうすぐ時間は30分になろうとしていた。