「貴之、明音ちゃんと一緒にいられるように協力しろよな!」

「ああ」


少しして、人ごみの中から蒼次の頭がひょっこりと見え始めた。


「蒼次!」


陽平がこっちだと知らせるように大きく手を振る。

その横にはピンクの花柄の浴衣を着た明音ちゃんもいた。


「悪い。待たせ…」

「お前、なんで明音ちゃんと!!」


突然、2人で現れたという状況にやっぱり、殺気立てていた。


「途中で会っただけだって」

「嘘、言ってねぇだろうな」

「本当だ。ここに来る途中に
明音ちゃんと会ったんだ」


必死の説得も無意味でしかない。


「すいません。
迷っちゃったみたいで…」


申し訳なさそうな謝る彼女。

絶対に彼女は悪くなんかないのに。


「そのぐらいにしとこう。
無事に会えたんだからさ」


俺は仕方なく仲裁に入る。

これ以上、楽しい祭りなのに明音ちゃんが可哀想に思えたから。


ちょっとしたことですぐに熱くなるのは陽平の欠点であり利点だ。


「蒼次。
今、何時か分かるか?」

「今、7時20分」

「いくらなんでも遅いよな」


俺は混んできた人の中をきょろきょろしながら探す。

しかし、茜らしき人物は現れそうになかった。