AKANE -もう一度、逢いたい-



なんで、あたしがあの子の尻拭いをさせられる必要があるのよ。

準備室へ行き、次の授業に必要な資料をたくさん持たされた。


源氏物語だから資料の量もハンパない。

教室までどれくらいの距離があるんだろう。

最悪だ。


「…重い」


向こうでかすかに聞き覚えのある声がした。

それは柔らかな彼女の話し声。


「ったく、
一度ちゃんと説教でも…」


柔らかい声と誰かの話し声。

きっとさっき呼びに来た人だろう。


盗み聞きなんかするつもりなかった。

それにさっきから『河崎さん』ってあたしの名前があがっているということはまた悪口か。

それか明音に対する忠告だろう。


「一生の一生のお願いなの!!!」


緊迫な中に響いた。

思わず通り過ぎようとしていた足も止まってしまった。


「でもね…」

「花火を見たいの!」


その言葉だけで理解できてしまった。

本当にどうでもよかった。

こういう子がたくさんいるのは知っていることだ。


特に明音はお人好しだから。


「どうしても一緒に行きたい。あたしを入れたらちょうど3対3になるでしょ?」

「でも、それはちょっと…」


きっとこんなお願いは今までにもたくさんあったに違いない。


「明音もそうやってみんなのこと断るけど理由でもあるの?」

「そんなことないよ。ただ茜ちゃんと仲良くなりたいだけだよ?」

「そっか。なんだ一緒じゃん」

「え?」


明音は何のことかさっぱり分からずに聞き返す。

あたしも何が一緒か分からなかった。


「明音もいいチャンスだって
思ったんじゃない?」


明音はなんのことかさっぱりのようだった。