「とにかくさ、
今はやるしかないよな」
「蒼次」
「先輩と出来るのも最後だろ。俺、なんか諦めたくないんだよなぁ」
空を見上げた横顔はキラキラに輝いていた。
俺も立ち止まり、空を見上げる。
「とにかくさ、
一生懸命にやるしかないよな」
「あぁ。何事もな」
何事も一生懸命にやると言った蒼次の言葉が心に染みる。
サッカーだけじゃなく、彼女のことも。
2人は顔を見合わせる。
「「目指せ、全国!!」」
空を指差し負けないほどの大声で叫ぶ。
あの雲ひとつない青空に向けて。
昨日までと同じ教室のドアを開けた。
口々に俺と蒼次に声を掛けてくる。
群がろうとする女子、俺らを見て噂する人たち。
そんな人ごみをかけ分けてくるヤツが1人。
「さっきのはなんだよ!」
第一声を発した陽平は1人だけ取り残されたような感じがして寂しかったらしい。
悔しそうな顔によく表れている。
「そのままのことだよ。な、貴之」
「あぁ」
「サッカー部は気合入れて
頑張ろうってことだよ」
「そういうことだから、
陽平も気合入れろよな」
貴之が釘をさすように言っても、全く納得しないで俺たちが席に着いてからもずっとブツブツ言っていた。
「お前さ、いい加減に…」
「陽平、そのチラシ何?」
「そうだ。言い忘れてた!」
陽平の机の上にあった1枚のチラシを嬉しそうに広げた。

