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茜が当時そんなことを考えていたなんて知りもしなかった。
茜はきっと自分自身を嫌っているのだろうと憶測はしていた。
原因は何か分からないけれど。
でもここまでとは思いもしなかったんだ。
夏休みに入り、講習も数日が過ぎた。
連日、暑い日ばかりが続く。
部活で真っ黒に染まった肌が証拠だった。
雨なんて全く降りそうにないほどの良い天気。
暑くて死にそうな夏はまだ続く。
そんな今日がまた訪れた。
「貴之。よお!」
後ろから声を掛けてきたのはサッカー部のキャプテンだった。
「おはようございます!」
「今日も暑いな。
誰かそろそろ倒れそうだな」
そんな冗談を言いながら大声で笑う大柄なキャプテン。
「そ、そうっすね…」
「ガハハハハハッ」
やはり声は大きい。
耳が壊れそうだ。
「おはよーございますっ!!」
後ろから挨拶をしたのは蒼次だった。
「もうすぐ、大会っすね」
「もう、そんな時期だな」
少し遠くを眺める先輩はどこか悲しそうに思えた。
八月の終わりあたりから始まる秋季大会。
それは高校で最後の大会だからだ。

