すると、茜は冗談言わないでというような顔で、こっちをにらみつけていた。

そして、はっきりと告げるのだった。


「相談事も愚痴もこのイライラも
全て原因はお前だよ」


いくらなんでも、はっきり過ぎる。


「それでも
相談に乗ってくれる？」


茜は眼鏡の奥の目が笑っていなかった。

まるで俺を試しているように見つめてくる。


「どうする？」


言葉は出てこない。

ここだけがまるで切り離されたような異空間だ。


「もういい。あたし行くから」


俺は引き止めたくても出来なかった。

体が言うことはきいてくれなかった。



君はいつでも俺に意地悪で冷たかった。

絶対に誰も近づけようとはしない。

それは自分に近づかせたくない理由が何かあるはずだ。


ただ俺が嫌いだということじゃないと思っていたんだ。


１０年前の君が別れを告げずに行ってしまったのも、君の優しさだろう？

別れるのが辛いから言い出せなかったんだろう？


そんな君が人に冷たく接するとは思えなかったんだ。


ただ君を知りたかった。

俺の知らない君の１０年という月日に何が起こったのかを。


ただ救えるのは俺だと強く信じていたことを。