「話したいことがあるんだ」

「手短に言ってよ」

「おう」


ただの知り合いですらない男に耳を傾けてくれたことが嬉しかった。


「同じ文系だったんだ」

「うん」

「茜って賢かったんだな」

「まぁ」

「同じクラスだったんだな」

「うん」


これじゃあ、まるで対話というよりも確認に近い。


「同じクラスだったから
俺びっくりしたよ」

「…あたしも」


短い言葉だったけど、同意してくれたそのさりげない一言が嬉しかった。


「まさか同じクラスになるとは想像もつかなかった」


少しでも話せたことが嬉しかった。

でも茜の表情は曇っていくような感じがした。


「茜?なんか怒ってる?」

「だって一番頭の良いクラスを選ぶなんて。信じられない」


返ってきた言葉は耳を疑うような言葉だった。



あの時はまだ本心が分からなかったんだ。

心のどこかで君は俺を無理やり傷つけようとしているんじゃないかって思っていた。

自分から遠ざけるために。


「そろそろ帰してくれる?」

「そうだ、メアドを…」

「どうして教える必要がある?」

「相談とか愚痴とか
言いやすいだろ?」


俺は無理やりにでも知りたかった。

もちろん言ってる言葉に嘘はない。