ブチッって何かが切れた。


「茜ちゃん、行こう!!」


そして茜の腕を掴んで教室を出ようとして、出入り口で止まる。


「…茜ちゃんは
あんたらの道具じゃない!」


怒鳴り散らして教室を飛び出した。


あとで奈緒から聞いた話によると温厚な私が怒ったことでクラス全員が驚いていたそうだ。


茜ちゃんを無理やり教室から連れ出して向かった先は視聴覚教室だった。


「痛い、離して」

「あ、ごめん」

「別に。
じゃあ、教室に戻る」

「でも、もう授業始まって…」

「じゃあ保健室に行く」

「あのさ…!!」

「何?」

「私ね、如月 明音(キサラギアカネ)って言うの」

「ふ~ん」

「その…」

「あんたも貴之の幼なじみの
あたしと仲良くなりたいんだ?」

「違うよ。
茜ちゃんと友達になりたい」

「それが一番迷惑な話だよね」


彼女はそう皮肉そうに呟いて保健室に向かっていった。




あの時は茜ちゃんの本心が見えなくて怖かった。

でも、あなたはもっと深い傷を負っているように私には映ったんだ。



1人で泣かないで。

あなたは一人ぼっちじゃないんだよ。


ただ、それだけを言いたかったのに。


これから私に待ち受ける未来が彼女に出会って変わっていくとも知らず。


どんな結末になるのかなんて想像すらしていなかったよ。