「……皆さんに話さなくてはならないから、ここに立たせてもらいました」
周囲からはざわめきの起こり始めていた。
「忘れもしない、2月14日」
あたしは固唾をのんだ。
「中野貴之が
交通事故に遭った日です」
一瞬にして大きな大きなざわめきが起こった。
それは無理もない。
「あたしは…
貴之の幼なじみです」
マイクを通して断言した。
ざわめきは一層大きくなった。
悲鳴が起き、騒然としていた。
無理もない。
この学校で貴之の幼なじみは心も見た目も醜い『河﨑 茜』だけ。
でも目の前の女の子は、別の女の子だから。
「あたしは…河﨑茜です」
きっぱりと言う。
突然のことに誰もが言葉を失っていた。
静寂な時が流れた。
分かってもらおうなんて無理な話だったのだろうか。
そう考えていると、いきなり罵声が飛んできた。
『貴之くんを返してよ!』
1人の女の子が大きな声で叫ぶ。
それに続けと言わんばかりに、罵声は飛んでくるばかりだった。