「…どういうことだろう」


本当に茜は何を考えているのだろう。


怖くて仕方がない。


座った茜と目があった。


「大丈夫」と口パクで知らせているのだった。


「大丈夫って言うけど、
やっぱり不安だよ」

「…そうだな」


蒼次くんがつぶやく。


けれども蒼次くんに戸惑いはなかった。


蒼次くんは茜が何をするつもりなのか、見当がついているのかもしれない。


そして卒業式は始まり、進んでいく。


何事もなかったように平和に進んでいく。


校長の話、理事長の話、いろいろな人からの挨拶の手紙…。


そして卒業証書の授与。


先輩たちは涙を流していた。


私ももらい泣きばかりしていた。


「在校生、送辞」


先生が次の項目、送辞を告げる。


「はい」


前の方から凛とした声が響き渡った。


「え…今の声…」


思わず前の方を見た。


たくさんの人で顔が見えなかった。


けれども今の声は絶対にその声だ。