「そろそろ
卒業式を始めますよ!」
先生の呼びかけに仕方なさそうに会場に戻っていく。
「…嵐が去った」
あたしにとってこんな体験初めてだった。
でも陽平や蒼次、明音はいつもこんなことになっていたのだ。
そして一番人気だった貴之も。
いつもこんなにも大変だったんだ。
「茜、大丈夫?」
「…無理」
そう言いながら大きなため息をついた。
「でもね、確かに少しだけ
自信を持てた気がする」
「茜…」
「でも、これは
本当の自分じゃないな」
あたしの発言にみんながびっくりしていた。
でも、本当にそうだ。
あたしはこれが本当の姿。
でも学校のみんなはあたしが『河﨑 茜』だとは思っていないだろう。
「河﨑 茜として
説得しないといけないから」
あたしは自分に言い聞かせるようにつぶやく。
もう逃げないと、いつも猫背がちな背から胸を反らした。

