きっと貴之を危ない目に遭わせて、未来を奪ってしまった張本人が来たからだろう。
また、あたしが疎まれるに違いないんだ。
「…やっぱりみんなが
恨んでも仕方ないか」
ボソッと呟く声が聞こえてしまったのか、明音が反応した。
「何言ってるの!」
「え、だって…」
「だってじゃないよ。この視線が恨んでるからだと思う?」
あたしはもう一度、周囲を見回す。
確かに視線が感じられたが、痛い視線ではなかった。
「視線が…痛くない…」
「でしょ?」
「……うん」
「自分でも言ってたじゃない。
誰も茜だって気付かないって」
明音の言葉で少し分かった気がした。
まだ自分のことが好きにはなれない。
『かわいい』なんて絶対に思わない。
けれども自分を嫌いにもなれなかった。
自分は必要ない人間だった。
でも死ぬことも出来なかったんだ。
やっと学校に着く。
校門のところには『卒業式』の立て看板が立っていた。
学校に入るなり、周囲の噂話は大きくなるばかり。
「蒼次くんたちいたよ!」
明音が蒼次たちに向けて大きく手を振った。
蒼次と隣にいた陽平も同じように手を振り返していた。

