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ついにやってきた卒業シーズン。


摂弥高校では今日、卒業式が行われる。


桜の蕾がふっくらと膨らみ始めていた。


あたしはいつも以上に早く目が覚めた。


覚悟は決めたけれど、緊張しているようだ。


あたしはいつものように制服に着替えた。


鏡を見て、髪をとかす。



今日は決めたことがあるんだ。


その決意を揺るがさないために、いつもの恰好をしない。


髪はみつ編みにくくらず、ロングのストレート。


ダサい眼鏡を外すのはいつ以来だろう。


目にかかるほどの前髪は横に流した。


全身を鏡で自分の姿を見つめた。


醜いあたしの本当の姿を見せるのは勇気がいることだ。


でも今ならば勇気をもって、大丈夫だと言えると思う。


…思いたい。



ねえ、貴之。


あたしの堂々とした姿を見ていてくれてますか?


空から見守っていてくれますか?


貴之のことを思えば、今のあたしがしようとしていることはちっぽけだ。


だから頑張れるよ。