「俺が茜ちゃんなら自分のことは知っておきたいと思うんだ」

「でも茜にはいろいろと
辛い過去があって…」


すると明音ちゃんがはっきりと言った。


「分かってるよ」

「だったら…」

「それでも茜には
知る権利があると思うの」


何が一番いいのか俺には分からない。


幼なじみの茜に何をしてやるのがいいのか分からないんだ。


でも茜のことをこの中で一番分かっているのは明音ちゃんだと思う。


俺が貴之のことを想ってきたように。


茜のことは明音ちゃんが一番分かってくれていると思うから。


貴之がいないこの状況では。




貴之。


お前はこのままいなくなってしまうのか。


貴之。


もう戻ってくることはないのか。



お前がいなくても、日常は過ぎていく。


けれど、お前がいないと茜は泣いてばかりだ。



俺は茜を守るために動いてやるよ。


でもそれは、お前が大切に思う人だからだ。



何より茜を救ってきたのは貴之だ。


そして今の茜を救えるのもお前じゃないのか。


貴之…。