学校に着くと、誰にも干渉されないように非常階段に行くのが最近の日課になっていた。


明音ちゃんと向かうと陽平もそこにいた。


「あ、やっぱり来たんだ」

「…まぁ」

「俺も新聞部に
追いかけまわされてさぁ」


参ったというように陽平も顔をゆがめていた。


「あのね、私、
茜に言おうと思う」

「…何を」

「その、今の学校で
起こっていることを」

「それ言ったら
どうなるか分からないぞ」


横で何の話か分かっていない陽平に、明音ちゃんは茜のイジメのことを話した。


「そんなことになってんの!?
俺がみんなに言おうか?」

「やめたほうがいい。
今は何もしないのが一番だ」

「私も蒼次くんの
言うとおりだと思う」


陽平は仕方ないと言うようだった。


「だから茜には
全部言おうと思うんだ」

「そんなことしたら…!」


そんなことしたら茜はもっと来れなくなってしまう。


貴之から茜の過去について聞いていた俺はその想いが拭えない。


不安だけが残った。


「俺も話した方が
いいと思う」


陽平がめずらしく真剣な顔だった。