ねぇ、貴之はこれからもずっとそばにいてくれるでしょ?


「ねぇ、起きてよ。
伝えたいことがあるから…」


あたしは何度も何度も話し掛けた。


「貴之、貴之ってば!」


くり返し名前を呼び続けた。


お願いだから、目を覚まして欲しくて。


ビクッと彼の目が動く。


そしてゆっくりとかすかに目が開いた。


「貴之!」

「俺――――」


その言葉を最後に、貴之の首はうなだれた。


「たかゆきーーーーー!!」


貴之はあたしに何かを告げようとしていた。


ねぇ、何が言いたかったの?


ねぇ、お願いだから話してよ。


でも彼はそのまま何も言わず、目も閉じてしまった。


お父さん、この人を連れて行かないで。


もう失いたくない。


「あたしを
置いて行かないでよ」


あたしの訴えもむなしく残る。


貴之の体はだんだん冷たくなっていった。


「いやぁーーーーーーー!!」


冷たい体をしっかりと抱きしめる。


あなたが好き、大好きです。


冷たい体が現実なんだと突き詰められた気がした。