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待ち合わせ場所は神社にした。


花火に誘われた日に待ち合わせに行かなかった場所。


人目にもつかなくていい所だと思ったから。


茜色に染まっている空の下で、あたしはただ1人ずっと待ち続けていた。


緊張して、心が持たないよ。


ドキドキも止まらない。


あたしは凍えた指先に息を吹きかけてあたためた。


そして前を見た。


遠くでも見つけられる。


部活帰りの貴之が少しずつあたしに向かって歩いていた。


「あ……」


彼を見かけて、あたしの鼓動は再びドクドク騒ぎ始めた。


「ヤバい、泣きそう」


涙は出そうにないけれど、そんな心持ちだった。


貴之は信号が赤だから横断歩道の前で立ち止まった。


すると彼もあたしを見つけたのだろう。


あたしの方を見て、優しく笑っていた。


信号が青に変わったら、ここに来る。


あたしも覚悟を決めないといけない。


ちゃんと自分の言葉で伝えたいことがあるから。


長い間、待たせてしまったね。


あたしも好きだよ。


今まで素直になれなかったけど、今日だけでも素直になりたいの。