「…やっぱり暑苦しい」
「そんなこと言っても
茜が好きだぞ」
ずっとずっと抱きしめられていた。
明日は誰にでも訪れるバレンタインデー。
明日はあたしにとっても賭けた日だ。
寝る前にこっそりと鞄の中に手作りのチョコを入れる。
誰も知らないはずなのに恥ずかしい。
***
今日は2月14日。
またこの日が来てしまった。
俺が一日中顔をひきつらせて、逃げる一日が。
しかし今年のバレンタインはドキドキもしていた。
「貴之!」
俺の母さんが慌てて弁当箱を持ってくる。
「せっかく
作ったんだから忘れないで!」
そう言って、俺に弁当を押し付けてくる。
「分かってる」
俺は弁当箱を受け取ると、また学校に向けて歩き始めた。
「もうすぐ大会なんだから、
無茶しないでよ」
「分かってるって」
俺は仕方なく大きな声で答えて走り出した。
今週末に行われる新人大会。
俺たちが最高学年となって初めての大会だ。

