『変わらないよ。だって今までの全てが茜だ。そしてこれからもずっと茜だから』
その言葉もいつものようにくさいセリフだった。
でも、その言葉は確かにあたしの心に響いたんだ。
嬉しかったんだ。
「そろそろ
向き合ってもいいと思うよ」
明音はあたしを思って言ってくれるんだ。
「でも、貴之と
向き合う自信がない」
「違うよ。
茜自身と向き合うんだよ」
明音は優しく背中を押してくれた。
気持ちを言うかどうか、そんなことまだ決めていない。
でも、感謝って気持ちでなら向き合える気がした。
「素直になれないけど、
感謝はしてる」
「うん」
「だから…お礼でなら、
渡せる…かも」
口を濁しながら、苦手な言葉を紡いだ。
「感謝の言葉ねぇ…」
明音がニヤニヤしながらこっちを見てきた。
「…そ、そうだよ!」
「そんなこと言って、好きって言おうかなって思ってるんじゃん!」
嬉しさを抑えられないのか、明音は飛んで抱きついてきた。
「そ、そんなこと!!」
「はいはい。今日は素直じゃなくても許してあげるけど、バレンタインは素直になってよね!」
あたしは何も言えなかった。
でも、それだけ図星だったんだ。

