あなたはこの学校のエースで、誰からも愛される人。
そんなあなたの傍にいていいのはあたしじゃない。
あたしみたいに醜くて、冷たくて、最悪な人じゃない。
明音のように優しくて、穏やかな人が傍にいてくれる方が理想だから。
あたしは明音に言えない理由を、渡せない理由をぶつけた。
「本当にそう思ってるの?」
「え?」
「貴之くんの気持ちは
考えたことあるの?」
初めて気づいた。
そんなこと考えたことはないけれど、貴之もそう思ってるはずだ。
「迷惑してたら助けてくれない!貴之くんは茜だから助けてくれたんじゃないの?」
明音は一生懸命に言ってくれる。
「でも…」
「もう、
でもとか言わないでよ」
明音は言うんだ。
ネガティブ思考も冷たいのも悪くないって。
「…なんでよ」
「だって全部含めて茜だから」
泣きながら微笑む明音はキレイだった。
全部含めて“あたし”。
過去も今も未来もすべて含めて“あたし”。
貴之もあたしに同じこと言ってくれたよね。
『過去の優しい茜も、小学生の頑張ってた茜も、中学生の大人しい茜も、今の芯を持った茜も、全て茜だろ?』
どんなあたしも受け入れてくれたよね。
『茜は変わっていない』
それでも断言してくれたんだ。

