「渡す決意した?」

「…何度も言うけど、
渡さないから」

「そんなこと言ってるから、女の子がチョコ渡しちゃうんだよ?」


明音の指先を見る。


そこにはたくさんの女子に囲まれた貴之がいた。


「貴之くん!バレンタインの日に渡したいものがあるの」

「ちょっと!
私のも受け取って下さい」

「友だちが
貴之くんのことが好きで…」


貴之を囲むたくさんの女子たち。


逃げることも出来そうにない。


「だから言ったでしょ?」


横で明音が忠告してくる。



けれどもあたしは、どうしたらいいのか分からない。


今さら渡して気持ちを伝えることはやっぱり遅すぎるよ。



今になって気付くなんて都合が良すぎてしまう。


何よりも今のあたしには自立することが何より大事だから。



そこへ蒼次があたしたちを見つけたのか近寄ってきた。


横で明音がかなり緊張しているようだった。


「あれは大変だな」


まるで他人事のように言うなら、助けてあげればいいのに。