「あの誰にでも優しくて、
理想の王子様の貴之くんよ?」

「いつも爽やかな笑顔で
ときめきをくれる貴之くんよ?」

「絶対に女の子からは
何ももらわない貴之くんよ?」

「でもその硬派なところが
またカッコよくて…」


「…だから何?」


自慢そうな話から空気が一変した。

それを感じた彼女たちは、ムッと腹を立て、言いたいことを吐き出し始めた。


「貴之くんは今まで誰にも
好意なんて見せなかった!」

「あの蒼次くんと
陽平くんだけにだった!」

「笑顔は笑顔でも2人にだけは
真実の笑顔だったの!」


そんなこと言われてもあたしには関係のない話だ。


「でも女の子に声かけるなんて
全くありえなかったのよ!?」

「しかも、あんなに必死に
走るなんて有り得ないのよ?」

「サッカー以外じゃ
見たことがなかった!」


そんなこと言われても分からない。


それっていわゆる嫌味でしょ。


「どうして、
よりによってあんたなの!?」


そんなことあたしに言わないで。

あたしだって最悪だ。


でも今は何を言っても聞いてくれないだろう。

だから嫌だった。


あんなにも目立つ奴と関わりたくなかった。

これ以上の関わりなんていらなかったんだ。